コラム

平成23年3月11日午後2時46分(続)

しかし、地震の直後ころから外国のメディアにも賞賛されているように、日本人のあの静けさはどこからくるのだろう?

この静けさについても、賛否両論があるらしいが、自分としては、それを体験したものとして、心の底から立派な民族だと思いたい。批判は甘んじようと思う。

その後、福島原発の危険度がレベル4だと発表されたときの憤りは、この体験と無関係ではない。

その日、東中野に住んでいる親戚に連絡が取れ、事情を話し泊めてもらうことになった。そこの主はチェルノブイリ原発事故の写真を撮り続けるとともに、チェルノブイリの人たちを題材とした映画を制作した人だ。ちょうど主も家におり、いろいろ話をした。そのころには福島原発が津波の被害にあったことも報道されていたと思う。自分自身も、そんな主を親戚筋に持った関係もあってか、若干ではあるが原発については興味があった。

その後の政府の発表では、福島原発の危険度の発表はレベル4だった。3ないし4基の原発が津波に遭い、相当なダメージを受けたはずなのに、レベル4という発表には違和感を持った。増して、当時、アメリカの発表ではレベル6だったはずだ。

スリーマイル島の原発事故はレベル6か7だったと思う。それは、1基の原発事故だ。

チェルノブイリ原発事故はほぼ最悪のレベル7だった。(これはその後、福島原発事故がレベル7に引き上げられたこととの均衡上レベル8を新設し、それにするともいわれている。)

一般的に原発事故のレベルについては、

レベル4
事業所外への大きなリスクを伴わない事故、或いは事業所外へリスクを伴う事故
放射性物質の限定的な外部放出
原子炉の炉心や放射性物質障壁のかなりの損傷があるもの

レベル6
大事故
放射性物質のかなりの外部放出
原子炉や放射性物質障壁に致命的な被害があるもの

レベル7
深刻な事故
放射性物質の重大な外部放出
原子炉や放射性物質障壁が壊滅、再建不能

ということらしい。(いろいろな基準があり、不正確は否めないが)

原発の設備については、

チェルノブイリ
黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉
格納容器がない

福島第一
3重の壁
計6基の沸騰水型軽水炉(BWR)

スリーマイル
3重の壁
軽水炉は、加圧水型原子炉(PWR)

とかであるが、専門家でもないものがこれについてとやかく言うものではない。

しかし、チェルノブイリには1号炉から4号炉のうち、4号炉が原発事故となり、スリーマイルには1号炉と2号炉があり、2号炉が原発事故となったのに対し、福島原発には1号炉から6号炉があり、1号炉から4号炉が原発事故となったのである。

素人目には、そのような福島原発事故が「事業所外への大きなリスクを伴わない事故」或いは「或いは事業所外へリスクを伴う事故」に過ぎないと日本政府が発表し、原発事故を経験しているアメリカですら、福島原発事故への評価であるレベル6を日本の発表に屈服させられ、レベルを下げたことについて、極めて大きな疑問・疑念を抱かずにはいられなかった。

仮に為政者が、「真のレベルを公表することにより惹起されるであろうパニックに配慮して」レベルを下げて発表したなどというのであれば、それは詭弁であり、国民を愚弄したものであると言わざるを得ない。

殊に、あの新宿での粛々とした人々の姿を目の当たりにした自分にとっては、日本国民はそれほど愚かではないと思うのだ。

そのような発表により、避難が遅れ、不安に苛まれている住民は一体どうなるのか?

どうせ、東京電力ひいては日本国政府の原発に対する危機意識のなさが指摘され、非難される時期は来るのだ(現に今はそのような状況である。)から、当初から愚にもつかない言い訳がましいレベル4などという発表はすべきではなかった。