コラム

憲法改正には反対です!!!

来る令和元年7月21日には参議院議員の半数が改選される選挙があります。
この選挙で与党は憲法改正を目指すことを政策として掲げ、野党の一部も憲法改正については前向きな考えを持っている党もあります。

憲法改正の目玉として「自衛隊」を憲法上明記することがあげられています。しかし、これは絶対にあってはならないことです。

自衛隊は、昭和29年に、防衛二法と呼ばれる法律(防衛庁設置法及び自衛隊法)により設置されたものでした。
その後、「防衛庁」が「防衛省」に格上げとなったため、現在では防衛二法は「防衛省設置法」と「自衛隊法」ということになっています。即ち、自衛隊は、憲法の下部法規である法律により設置されたものであり、その法律は国会により決議されたものです。
防衛省は、「庁」から「省」に格上げされた下部組織の中で極めて新しい組織です。

ここで重要なのは、自衛隊の存在は、憲法より地位的に下の法規である「法律」に依拠したものであるということです。極論で、あり得ない話ですが、仮に現在の自衛隊を廃止する場合には、法律を改正すれば良いのです。(このようなことは世界の情勢からしてあり得ないことです。)

自衛隊が憲法上の存在となった場合、それはどのように考えるべきなるのでしょうか?
国の行政組織を定めた法律に「国家行政組織」(昭和二十三年法律第百二十号)があります。
この法律には以下の定めがなされています。
第三条 国の行政機関の組織は、この法律でこれを定めるものとする。
2 行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、委員会及び庁とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる。
3 省は、内閣の統轄の下に第五条第一項の規定により各省大臣の分担管理する行政事務及び同条第二項の規定により当該大臣が掌理する行政事務をつかさどる機関として置かれるものとし、委員会及び庁は、省に、その外局として置かれるものとする。

自衛隊も国家行政組織法という法律により設置されたもので自衛隊設置法には以下の定めがなされています。
第二条 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項の規定に基づいて、防衛省を設置する。
2 防衛省の長は、防衛大臣とする。
自衛隊は監督を受けるとされていますが、自衛隊は防衛省の外局なのかどうかについては若干不明確です。

日本には「海上保安庁」や「警察庁」もあります。
海上保安庁(Japan Coast Guardは、国土交通省の外局として、海上における人命および財産の保護、ならびに法律違反の予防、捜査および鎮圧を目的とします。
警察庁(National Police Agencyは、内閣府の外局として、内閣総理大臣の下に置かれる国家公安委員会の「特別の機関」で、警察制度の企画立案のほか、国の公安に係る事案についての警察運営、警察活動の基盤である教養、通信、鑑識等に関する事務、警察行政に関する調整等を行う行政機関です。

自衛隊を憲法上に明示すべきであると主張する憲法改正賛成論者は、「自衛隊は、国防のみならず、災害時における国民のための活動をしてきているにもかかわらず、憲法違反だなどということはけしからん」などという理由で、「自衛隊は憲法違反でないことを憲法で明示することが必要不可欠である」と自衛隊を憲法に明示することを正当化しているのですが、これは極めて心情的で国民には相当に「なるほど」という感覚を植え付けてしまっているのではないでしょうか。

仮に自衛隊を憲法に明示した場合、自衛隊は、日本国の主権者である国民、国会、内閣、司法、地方公共団体等の憲法上の組織と同列なものとなってしまいます。
自衛隊は憲法に反するものかどうかという議論もありました。違憲論を現在でも維持している人もいます。
しかし、自衛隊の存在が憲法上許されるかどうかについては議論はあるものの、その存在については容認する方向で一応落ち着きは見せていると考えられます。

自衛隊は前述のとおり、国家行政組織法という法律に基づいて設置されていますが、自衛権はどの国家も有する権利であることは明らかですが、だからといって、法律では認められたに過ぎない存在を、憲法上の存在とすることは絶対にあり得ないのです。
憲法上に明示された組織ですから、その存在は法律によって定められたものではなく、名称の変更をする場合にさえ、憲法の改正手続をしなければなりません。それは「防衛庁」が「防衛省」に格上げするよりもっと凄いことで、それほど「自衛隊」は憲法上の確固たる存在となってしまいます。

自衛隊を憲法に明示するなどという法体系を破壊する行為は絶対に許してはならないのです

また、憲法上に高等教育の無償化を憲法に載せるなどといういわば「甘い蜜」を振りまかれようとしています。しかし、「高等教育」を受けないで仕事に就こうとする人(それも自由なはずです。)にとっては、そのような憲法の規定はどのようになるのでしょうか?
義務教育は教育の「義務」を課しているのですから、無償とすべきです。しかし、高等教育を受けるのは「義務」ではありません。それを無償とすることはそれこそ憲法上問題があるのです。「義務教育でそれ以上の学校に行く人はいないか少ないから」などという法律的でない議論によっては正当化されません。そのようないわば「甘く」「国民をミスリードする」ようなものを見抜ける国民であるべきです。