コラム

東京高検検事長の定年を半年延長した閣議決定に異議!!!

日本はどうしてこんな国に成り下がってしまったのか?
内閣は、去る令和2年1月31日、東京高等検察庁検事長である黒川弘務氏の定半年延長を閣議決定しました。
  黒川氏は同氏の誕生日前日の2月7日に検察庁法に定める定年により退官する予定でした。
そして、安倍首相は2月13日の衆院本会議で、黒川東京高検検事長の定年を半年延長した閣議決定は、法解釈を変更した結果だと答弁しました。
その答弁において、安倍首相は、国家公務員法の定年制は検察官に適用されないとした人事院の1981年の国会答弁について、「当時、検察庁法に基づき除外されると理解していたと承知している」と認めつつ、「検察官も国家公務員で、今般、検察庁法に定められた特例以外には国家公務員法が適用される関係にあり、検察官の勤務(定年)延長に国家公務員法の規定が適用されると解釈することとした」と述べました。
また、衆議院予算委員会だと思いますが、森まさこ法務大臣は、「検事も国家公務員であり、公務員の一般法である国家公務員法を適用して延長を認めた。」などと答弁しております。 このようなことは許されるのでしょうか?

ここで考えなければならないのは、国家公務員法と検察庁法との関係です。

法律をきちんと学んだ者にとっては、政府の見解は全く理解できない方論理であることは明らかだろうと思います。
検事も国家公務員です。
しかし、検事は、退官(定年)を定めた検察庁法22条で、「検事総長は、年齢が六十五年に達した時に、その他の検察官は年齢が六十三年に達した時に退官する。」と定められています。
そして、この検察庁法22条と国家公務員法との関係については、検察庁法32条の2によって「検察官の職務と責任の特殊性に基いて」国家公務員法附則13条の特例を定めたものと明記されています。
この条項は、検察庁法制定当初は存在しなかったのですが、その後施行された国家公務員法との関係から、昭和二四年の検察庁法改正で追加されたものであり、検察官の級別、任命資格、欠格事由、定年、適格審査、剰員及び身分保障の規定は、検察官の職責の特殊性に基づき、国家公務員法の施行によって影響を受けないものであって、国家公務員法の特例とすることを明らかにしたものなのです。
検事の特殊性は、このような一種の身分保障のみならず、報酬の面においても「検察官の俸給等に関する法律」に基づき一般の国家公務員とは異なる俸給の制度が定められています。
定年や俸給は、検事の職種の特殊性から、他の一般の公務員とは別に特別の定めをして、検事は特別の定めに従うことになっているのです。
このような法律の定め方を法論理的に言いますと、「一般法」と「特別法」という関係に立ち、同一の事項(例に挙げると、定年・俸給)については、検事は国家公務員法の適用を受けることはなく、特別法である検察庁法の適用を受けることになります。
このような法律の定め方は、様々な法律の場面に現れることで、例えば、土地の賃貸借契約についても、建物所有を目的とする借地契約(但し、一時使用の目的のものは除かれます。)については、民法の特別法といえる「借地借家法」が適用され、民法の規定は適用されないのです。
このような一般法と特別法との関係については、法律を本格的に学んだ者にとっては常識ともいえることです。
森まさこ法務大臣は、公表されているプロフィールからすると、昭和63年に東北大学法学部を卒業、その7年後である平成7年に弁護士登録、平成11年米国ニューヨーク大学法科大学院客員研究員、平成17年金融庁総務企画局課長補佐(貸金業法)、平成18年金融庁検査局金融証券検査官(証券・金融)という経歴の持ち主であり、特別法と一般法についての理解は私たちと同じ勉強をしており、法務大臣までになっておられるのですから、法的な能力はおありだろうと思っていたので、そのような方が「検事も国家公務員であり、公務員の一般法である国家公務員法を適用して延長を認めた。」などと全く法律家らしからぬ答弁をされたことには、同じ法律を学び生業としている者としては、唖然とされられたとしか言いようがありませんでした。

そして、予算委員会での野党の質問もこの一般法と特別法との関係について突っ込んだ質問をしなかったことについては残念でなりません。

黒川弘務東京高検検事長の定年を半年延長した閣議決定は法律を無視したもので違法だと思います。「検事の俸給についても一般法を適用して他の国家公務員と同等にして良いのか」などという暴論も言いたくなります。

法律の基礎を忘れた法務大臣と法律を全く知らない他の閣僚の集合体である内閣の閣議はとんでもない法律違反をしているとか言いようがありません。
このようないわば無法者に国家が牛耳られていることに不安を覚えます。

それとともに、定年を延長された黒川検事長もやはりおなじです。正義を司る検察庁の上級検事がこのような無法者に推挙されて、検事長から更に検事総長になるかもしれないということについて法律家としての良心はあるのでしょうか。それほど出世というものは大切なのでしょうか。疑問でなりません。定年の延長は辞退すべきです。

そして、「法の支配」を受け容れた正しい日本であって欲しいと思います。